夜勤明けに昼間眠れない理由と起こりやすい悪循環

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夜勤明けに昼間眠れない理由と起こりやすい悪循環


「体は鉛のように重いのに、脳だけが冴えて目がランランとしている」

「布団に入っても、心臓のドキドキが聞こえてくるようで落ち着かない」

夜勤明けの朝、本当はすぐにでも眠りにつきたいはずなのに、なぜか目が冴えてしまう。

そんな経験をして、「自分は不眠症なのだろうか」と不安に思っていませんか?

実は、夜勤明けに昼間眠れないという現象には、体の構造上、明確な理由があります。

それはあなたの意志が弱いからでも、体質だけの問題でもありません。

人間の体には、数万年前から刻まれた「昼行性」のリズムがあり、夜勤という働き方はそれに真っ向から逆らう行為だからです。

本記事では、あなたの体の中で今まさに起きている「目に見えない戦い」と、良かれと思ってやってしまっている「逆効果な行動」について、深く掘り下げていきます。

目次

1. 夜勤明けは体が「戦闘モード」のままになりやすい

夜勤明けに眠れない最大の原因は、自律神経のバランスが崩れ、体が休息を受け入れられない状態にあることです。

これを専門的な視点で見ると、交感神経が優位になりすぎている「過緊張」の状態と言えます。

①交感神経と副交感神経のスイッチ故障

私たちの体は、活動時に働く「交感神経(アクセル)」と、休息時に働く「副交感神経(ブレーキ)」がシーソーのようにバランスを取り合っています。

通常、夜になると副交感神経が優位になり自然と眠くなりますが、夜勤中は無理やり交感神経をフル稼働させて仕事をしています。

なぜなら、夜勤は「緊急事態」だと脳が認識しているからです。

本来眠るべき時間に起きているということは、原始的な脳にとっては「外敵から身を守っている」あるいは「獲物を追っている」状態と同じです。

そのため、仕事が終わって帰宅しても、脳はすぐに「安全だ、休もう」とは切り替わりません。

アクセルを踏みっぱなしにしたエンジンのように、体は熱を帯び、興奮状態が続いています。

その結果、布団に入ってもリラックスできず、眠気が訪れないのです。

②朝の日光が引き起こす「覚醒シグナル」の矛盾

夜勤明けの帰宅時、あなたの目に入ってくる「朝の光」が、睡眠にとって非常に強力な阻害要因となります。

光は単なる明るさではなく、脳に対する強力な指令信号です。

人間の体内時計は、2500ルクス以上の光を浴びることでリセットされ、「朝が来た、活動を開始しろ」という指令を出します。

夜勤明けでヘトヘトに疲れているのに、網膜から入った朝日の情報は、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分に届き、眠気をもたらすホルモンであるメラトニンの分泌を強制的にストップさせます。

つまり、体は「眠りたい(睡眠圧)」のに、脳は「起きろ(覚醒信号)」と叫んでいる状態です。この強烈な矛盾が、帰宅後の入眠を困難にし、夜勤 昼間 眠れないという苦しみを生み出しています。

③ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌ピーク

もう一つの生理学的な要因は、ホルモンバランスです。人間には、朝目覚めるために「コルチゾール」というホルモンを分泌するリズムが備わっています。

コルチゾールは血糖値や血圧を上げ、体を活動に適した状態にする働きがあり、通常は起床前の早朝から分泌量が増え始めます。

夜勤明けの朝は、本来ならばコルチゾールがピークに達して「さあ、活動するぞ」という時間帯です。

それに加えて、仕事の緊張やストレスもコルチゾールの分泌を促進します。

つまり、夜勤明けの体の中では、天然の興奮剤が大量に駆け巡っているようなものです。

このホルモンの波に逆らって眠ることは、生理学的に見ても非常に難易度が高い行為なのです。



2. 疲れているのに眠れない状態が起きる理由

「疲れれば眠れるはず」というのは、通常のリズムで生活している場合の常識ですが、夜勤などの不規則な生活においては、その常識が通用しない「魔の時間帯」が存在します。

①「睡眠圧」と「概日リズム」のズレが生む悲劇

睡眠には2つの主要なプロセスが関わっています。

起きている時間が長くなるほど溜まっていく「睡眠圧(ホメオスタシス)」と、体内時計による「概日リズム(サーカディアンリズム)」です。

通常、夜になるとこの2つが重なり合って強力な眠気を生み出しますが、夜勤明けの昼間はこれらが乖離してしまいます。

夜勤明けは、徹夜をしているため「睡眠圧」は最大レベルに達しています。

しかし、「概日リズム」の方は、体温を上昇させ、脳を覚醒させる方向(昼間の活動モード)へと動いています。

この2つの力が綱引きをしている状態が、夜勤明けの昼間です。どれだけ睡眠圧が高くても、概日リズムによる覚醒力が勝ってしまうと、強烈な眠気とダルさを感じながらも、脳のスイッチが切れずに眠れないという、非常に苦しい状態(過覚醒)に陥ります。

②深部体温のリズムと入眠のメカニズム

人間がスムーズに入眠するためには、体の中心部の温度である「深部体温」が下がる必要があります。

赤ちゃんが眠い時に手足が温かくなるのは、手足から熱を放出して深部体温を下げているからです。

しかし、人間の深部体温は、日中の活動時間帯に最も高くなるようにプログラムされています。

夜勤明けの昼間、特に正午に近づくにつれて、深部体温は自然と上昇していきます。

これは生理現象として避けられない動きです。深部体温が上がっていくタイミングで無理やり眠ろうとしても、体は「今は活動して体温を維持する時間だ」と判断し、睡眠への移行を拒絶します。

これが、「布団に入って2時間経つのにまだ眠れない」という現象の正体です。体の熱放散がうまくいかず、熱がこもったような不快感を感じるのはこのためです。

③騒音・光・生活音による環境的ハードル

夜勤明けの睡眠を妨げるのは、体内メカニズムだけではありません。昼間の住宅環境そのものが、睡眠に適していないという物理的な問題があります。

昼間の生活環境音は、夜間に比べて圧倒的に大きく、種類も多様です。

家族の足音、外を走る車の音、工事の音、選挙カーの声。これらは40〜60デシベルに達することがあり、これは睡眠を分断するのに十分な大きさです。

さらに、遮光カーテンを使っていても、隙間から漏れる光や、部屋の温度上昇も睡眠の質を低下させます。

夜勤明けの脳は前述したように「過敏」になっているため、普段なら気にならない小さな物音や光の変化に対しても敏感に反応し、そのたびに覚醒レベルが引き上げられてしまいます。

環境そのものが、あなたの睡眠を邪魔する敵となっているのです。



3. 夜勤明けにやりがちな逆効果な行動

眠れない焦りから、私たちは何とかして眠ろうと様々な工夫をします。

しかし、良かれと思ってやっているその行動が、実はさらに睡眠を遠ざけ、悪循環を加速させていることが多々あります。

①寝酒(アルコール)による強制シャットダウン

「お酒を飲めば気絶するように眠れるから」と、帰宅後にビールや缶チューハイを開けていませんか?

確かにアルコールには入眠作用があり、一時的に寝つきは良くなります。

しかし、アルコールによる睡眠は、脳を麻痺させているだけであり、質の高い休息とは程遠いものです。

アルコールが体内で分解される際、アセトアルデヒドという毒性物質が発生し、これが交感神経を刺激します。

その結果、睡眠の後半で脈拍が上がり、体温が上昇し、眠りが浅くなって中途覚醒(途中で目が覚めること)を引き起こします。

また、アルコールは利尿作用があるため、トイレで起きる原因にもなります。

「寝酒をしないと眠れない」という状態は、睡眠の質を著しく低下させ、次の夜勤への疲労回復を妨げる最大の要因となります。

②布団の中での「リベンジ夜更かし」とスマホ

夜勤というハードな仕事を終えた後、「自分の時間を取り戻したい」という心理が働き、眠いはずなのにスマホを見続けてしまうことがあります。これを「リベンジ夜更かし」と呼びます。

布団の中でスマホを見る行為は、夜勤明けの脳にとって最悪の組み合わせです。

スマホ画面から発せられるブルーライトは、太陽光と同様に脳を覚醒させるシグナルとなります。

さらに、SNSや動画などのコンテンツは、脳の報酬系を刺激し、ドーパミンを分泌させます。

ドーパミンは「もっと見たい、もっと知りたい」という欲求を引き起こす興奮物質です。

体は休息を求めているのに、脳に興奮物質と覚醒シグナルを与え続けることで、自律神経の乱れはさらに深刻化し、慢性的な睡眠障害へと繋がっていきます。

③満腹になるまで食べてしまう「ドカ食い」

夜勤明けは空腹感が強く、つい高カロリーな食事を大量に摂ってしまいがちです。

これは、睡眠不足によって食欲増進ホルモン「グレリン」が増え、食欲抑制ホルモン「レプチン」が減るためです。

しかし、就寝直前の大量の食事は、消化器官をフル稼働させ、深部体温を下りにくくさせます。

胃腸が活発に動いている間は、体は「活動中」とみなされ、深い睡眠に入ることができません。

特に脂っこいものや糖質の多いものは消化に時間がかかり、睡眠中の胃もたれや逆流性食道炎のリスクも高めます。

満腹感で眠気誘う作戦は、結果的に睡眠の質を下げ、起きた時の疲労感(だるさ)を増大させる原因となります。

消化の良いものを腹八分目に抑えることが、良質な睡眠への近道です。



おわりに

夜勤明けに昼間眠れないのは、決してあなたのせいではありません。

「交感神経の過度な興奮」「体内時計との不一致」「環境要因」が複雑に絡み合った、生理学的に自然な反応なのです。

しかし、寝酒やスマホといった行動は、その辛い状況をさらに悪化させてしまいます。

まずは、「眠れなくても横になっているだけで体は休まっている」と割り切り、焦らないことが大切です。

そして、帰宅時にサングラスをかける、寝室を完全な暗闇にするなど、光のコントロールから始めてみてください。



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