「夜勤が始まってから、なぜかどんどん体重が増えていく…」。
あなたはそんな悩みを抱えていませんか? スーツのボタンがきつくなった、健康診断の数値が気になる、疲れているのに体重だけは増える。
これは決してあなたの意志が弱いからではありません。
夜勤という特殊な労働環境が、私たちの体に本来備わった生体リズム(サーカディアンリズム)を大きく乱し、結果として太るという現象を引き起こしているのです。
特に、食事のタイミングと内容が、その大きな鍵を握っています。
本記事では、夜勤で体重が増加する根本的な原因を、詳しく解説し、あなたの悩みを「理解」するための一歩を提供します。
多くの夜勤者が直面するこの問題、その核心に迫りましょう。
1. 夜22時〜2時は脂肪を蓄えやすい時間帯


夜間、特に22時から深夜2時にかけては、私たちの体が最も効率的に脂肪を蓄積してしまう「危険ゾーン」であるという事実をまず理解する必要があります。
これは、単に活動量が少なくなるからという理由だけではありません。
私たちの体内時計を制御する「時計遺伝子」の働きが深く関わっているのです。
具体的には、脂肪合成を促進するタンパク質「BMAL1(ビーマルワン)」の分泌量が、この時間帯にピークを迎えることが明らかになっています。
BMAL1は、脂肪細胞内で脂肪酸やコレステロールの合成を促す酵素の発現を高める役割を持ちます。
つまり、BMAL1の量が多い時間帯にエネルギーを摂取すると、そのエネルギーが活動の燃料として使われるよりも、脂肪として蓄積されやすくなるのです。
研究によれば、BMAL1の量は午後10時頃から急激に増加し、深夜2時頃にピークに達し、その後明け方にかけて減少していくことが確認されています。
これは、昼間に同じ量のカロリーを摂取する場合と比べて、夜間に摂取するカロリーの方が体重増加や体脂肪率の上昇につながりやすいことを示す複数の研究結果とも一致しています。
さらに、夜間は副交感神経が優位になり、消化吸収機能は比較的活発になる一方で、基礎代謝量は日中に比べて低下しています。
つまり、「脂肪を溜め込みやすい状態(BMAL1増加)」かつ「エネルギー消費が少ない状態(代謝低下)」という、体重増加にとって最悪の条件が深夜には重なっているのです。
夜勤中、特にこの22時〜2時の時間帯にメインの食事や高カロリーな間食を取ることが、夜勤で太る原因の根本的なメカニズムの一つと言えるでしょう。
2. 炭水化物偏重の軽食が太る要因に


夜勤中の空腹感や疲労感を手軽に紛らわせるために、つい選んでしまうのが「炭水化物メインの軽食」ではないでしょうか。
おにぎり、菓子パン、カップ麺、パスタ、うどん、シリアル…。
確かにこれらは短時間で満腹感を得やすく、調理の手間も少ない便利な選択肢です。
しかし、この「炭水化物偏重」の食生活こそが、夜勤で太る原因のもう一つの大きな柱なのです。
問題は、これらの食品がもたらす血糖値の急激な乱高下と、それに伴う代謝への悪影響にあります。
炭水化物、特に精製された糖質(白米、白パン、麺類、砂糖など)は、摂取すると急速に消化・吸収され、血液中のブドウ糖(血糖)濃度を急激に上昇させます。
すると、体はこの高血糖状態を危険と感知し、膵臓から大量のインスリンを分泌します。
インスリンは血糖を筋肉や肝臓、脂肪細胞に取り込ませて血糖値を下げる重要なホルモンですが、同時に「脂肪の合成を促進し、脂肪の分解を抑制する」働きもあります。
深夜の「脂肪蓄積モード」の時間帯に炭水化物を大量に摂取することは、このインスリンの大量分泌を招き、取り込まれた糖が脂肪として蓄積されるプロセスを強力に後押ししてしまうのです。
さらに深刻なのは、血糖値の急上昇の後には、必ず急降下(血糖値スパイク)が起こる点です。
血糖値が急激に下がると、脳は「エネルギー不足」と判断し、強い空腹感や倦怠感、集中力の低下、さらにはイライラなどを引き起こします。
これが、夜勤中に「また何か食べたい…」という欲求を生み出す悪循環の始まりです。
疲れた頭や体は、より手軽な糖質(甘いものや炭水化物)を欲しがり、再び炭水化物中心の軽食に手を伸ばしてしまう。
この繰り返しが、気づかぬうちに過剰なカロリー摂取と脂肪蓄積を招き、体重増加へと直結するのです。
夜勤中の食事で炭水化物が主食になること自体が問題というよりも、そればかりに偏り、タンパク質や食物繊維、良質な脂質が極端に不足した「栄養の偏り」が夜勤で太る原因を深刻化させています。
3. 夜勤中の間食や甘い飲料・菓子パンによるカロリー過多


夜勤の辛さは、長時間の覚醒と、体内時計とのズレによる強い眠気・疲労感にあります。
そんな中で、気分転換や眠気覚まし、疲労回復の「つもり」で、つい手が伸びてしまうのが、甘い飲料やスナック菓子、菓子パンなどの「高カロリー間食」です。
コーヒーにたっぷりの砂糖やフレーバーシロップを入れたり、エナジードリンクを頻繁に飲んだり、休憩時間にチョコレートやポテトチップスを食べたり…。
これらの行為は、一見その場しのぎの活力を得ているように感じられますが、実は夜勤で太る原因を加速させる非常に危険な習慣です。
最大の問題は、これらの食品が「液体カロリー」や「空っぽのカロリー」であることが多く、非常に高カロリーなのに満腹感が持続せず、栄養価も低い点にあります。
例えば、代表的な甘い飲料や間食のカロリーを見てみましょう。
- 炭酸飲料 (500ml): 約200-250kcal → ごはん1膳弱に相当する糖分が一気に摂取できる。
- フラペチーノなどの甘いコーヒー飲料 (Tallサイズ): 250kcal以上になることも珍しくない。
- エナジードリンク (1本): 100kcal前後。カフェインと糖分の組み合わせで依存性が懸念される。
- チョコレートバー (1枚): 250-300kcal。少量で高カロリーの典型。
- ポテトチップス (1袋): 300-500kcal。脂質と塩分も過剰になりやすい。
- クリームたっぷりの菓子パン (1個): 400-600kcal。糖質と脂質の塊。
これらの間食は、通常の食事に「追加」で摂取されるため、総摂取カロリーが容易にオーバーします。
特に甘い飲料は「飲む」という行為ゆえに、固形物を食べるよりもはるかに大量の糖分を短時間で、ほぼ無意識に摂取できてしまうという点が恐ろしいのです。
また、疲労やストレス下では、脳は快楽を求めるため、糖分や脂質への欲求が強まります。
さらに、深夜は意志力(セルフコントロール能力)も低下しがちなため、つい「もう一つ…」と食べ過ぎてしまうのです。
「脂肪を溜め込みやすい時間帯」に「高カロリーで栄養価の低い間食」を摂るというダブルパンチが、夜勤者の体重増加を確実に推し進める最大の夜勤で太る原因の一つと言っても過言ではありません。
おわりに
夜勤が続くと、なぜか体重が増える…その原因は決してあなたの努力不足ではありません。
体内時計の乱れ(BMAL1増加による深夜の脂肪蓄積モード)、栄養バランスの偏り(炭水化物過多によるインスリン分泌と血糖値スパイク)、そして高カロリー間食・甘い飲料によるカロリーオーバー。
この3つの悪循環が絡み合い、夜勤で太るという現象を生み出しているのです。夜勤という特殊な環境が、私たちの体の自然なリズムとエネルギー代謝を大きく狂わせています。
この現状を理解することは、決して自己嫌悪に陥るためではなく、「敵を知る」ための第一歩です。原因が明らかになれば、それを断ち切る具体的な対策を講じる道筋が見えてきます。
夜勤をしながらでも健康的な体重を維持することは、決して不可能な目標ではありません。
知識を武器に、夜勤生活と上手に向き合う方法を一緒に探っていきましょう。









