最近、物忘れが多くなったり、以前は簡単にできていたことが難しくなったりして、もしかして認知機能が低下しているのでは、と心配になっていませんか?
特に、不規則な生活や夜勤業務に従事している方は、そのリズムが身体や脳に影響を及ぼし、認知能力の低下をより感じやすいかもしれません。
本記事では、認知機能の低下をセルフチェックするための主要なサインを、専門的な知見に基づきながらも、分かりやすく解説していきます。
自身の変化に気づくことは、早期の対策を始める第一歩です。
日々の生活の中で、ご自身の状態を客観的に見つめ直すきっかけにしてください。
1. 記憶力の変化:短期記憶の低下


①なぜ新しいことが覚えられないのか
記憶力の低下と聞くと、「昔のことが思い出せない」というイメージを持つかもしれませんが、認知機能の低下で最初に現れることが多いのは、新しい情報が覚えられないといった短期記憶の低下です。
例えば、ついさっき聞いたばかりの人の名前や、朝食に何を食べたのかが思い出せない、といった経験はありませんか?
このような記憶力の変化は、脳の海馬と呼ばれる部分の機能低下と深く関連しています。
海馬は、新しい情報を一時的に保管し、長期記憶へと移行させる役割を担っています。
しかし、慢性的な睡眠不足、特に夜勤による睡眠リズムの乱れは、この海馬の働きを阻害することが知られています。
睡眠中には、日中に得た情報を整理し、定着させるプロセスが行われますが、この時間が十分に確保されないと、記憶の整理が滞り、新しい情報が入りにくくなってしまうのです。
②ストレスと記憶力
さらに、ストレスも記憶力に大きな影響を与えます。
仕事のプレッシャーや不規則な生活が引き起こすストレスは、コルチゾールというストレスホルモンを過剰に分泌させ、これが海馬の神経細胞にダメージを与える可能性があります。
そのため、以前は楽にこなせていた仕事の指示を覚えられなかったり、新しいスキルを習得するのが難しくなったりするといった事態に繋がることがあります。
このような変化を感じ始めたら、まずはご自身の生活習慣を見直すことが重要です。
十分な睡眠時間を確保すること、ストレスを軽減するためのリフレッシュ方法を見つけることが、認知能力を維持するための第一歩となります。
また、日記をつけるなどして、日々の出来事を記録することも、記憶を定着させる訓練として有効です。
2. 実行機能の低下:計画立てたり順序立てた行動が困難になる


①計画と実行を司る「脳の司令塔」
実行機能とは、目標に向かって計画を立て、それを順序立てて実行する能力のことです。
これには、複数の選択肢から最適なものを選び、問題を解決する思考力も含まれます。
例えば、日々の業務で「Aのタスクを終えたらBの資料を作成し、その間にCの連絡を入れておく」といったマルチタスクをこなすことが難しくなったり、料理の段取りが以前より複雑に感じられたりすることはありませんか?
これは、脳の前頭前野と呼ばれる領域の機能が関係しています。
前頭前野は、思考や判断、行動の計画を司る、いわば「脳の司令塔」です。
この領域の働きが低下すると、物事を体系的に捉え、効率的に行動することが困難になります。
特に、夜勤業務のように、常に高い集中力と臨機応変な対応が求められる環境では、この実行機能が低下すると業務効率が著しく落ちる可能性があります。
②衝動的な行動と適応力
実行機能の低下は、単に「計画が苦手になった」というだけでなく、衝動的な行動が増えたり、新しい状況への適応が難しくなったりすることにも繋がります。
これは、計画性や自制心といった能力が衰えるためです。
たとえば、以前なら冷静に判断していた場面で、つい感情的な反応をしてしまったり、些細なトラブルに対応できず、パニックになってしまったりすることが増えるかもしれません。
このような変化に気づいたら、一度に多くのことをこなそうとせず、タスクを細分化して、一つひとつに集中して取り組むように工夫することが大切です。
また、新しい趣味や挑戦をすることで、前頭前野を活性化させるトレーニングにもなります。
3. 注意力の問題:複数のことに注意を向けられない、集中が持続しない


①なぜ集中力が続かないのか
「最近、仕事中に気が散りやすくなった」「一つのことに集中できず、ミスが増えた」と感じることはありませんか?
これは、認知機能の重要な要素である注意力の低下を示すサインかもしれません。
注意力は、特定の情報に意識を集中させ、それ以外の刺激を無視する能力です。
この機能が衰えると、周囲の雑音や些細な出来事に気を取られやすくなり、タスクの遂行が困難になります。
特に、夜勤という特殊な勤務環境は、この注意力の低下に大きな影響を及ぼします。
人間には、覚醒と睡眠を司る体内時計(サーカディアンリズム)が備わっていますが、夜間に活動することでこのリズムが乱れ、脳の覚醒度が不十分な状態が続きます。
これにより、日中の眠気や倦怠感だけでなく、注意を維持する能力が低下し、集中力が散漫になりがちです。
②日常生活への影響
注意力の低下は、単なる「ぼんやり」とした状態とは異なり、仕事や日常生活に具体的な影響を及ぼします。
例えば、会議での議論についていけなくなったり、車を運転中に標識を見落としたり、あるいは本や新聞を読んでも内容が頭に入ってこなかったりするかもしれません。
このような変化は、日常生活の質を著しく低下させるだけでなく、思わぬ事故やミスに繋がるリスクも高めます。
注意力の低下を感じ始めたら、まずは十分な睡眠を確保し、体内時計の乱れを最小限に抑える努力が必要です。
また、短時間でも休憩を取り、脳を休ませる時間を作ることが効果的です。
集中力を高めるためのトレーニングとして、マインドフルネス瞑想や、パズル、クロスワードなどを取り入れることも有効です。
4. 言語機能の変化:言葉がすぐに出てこない、会話の理解に時間がかかる


①言葉が出てこない原因
「あれ」「それ」といった指示代名詞が増えたり、話している途中で言葉に詰まってしまったりすることはありませんか?
これは、認知機能の低下によって言語機能に変化が起きているサインかもしれません。
言語機能とは、言葉を理解し、適切に使う能力全般を指します。
これには、言葉を選ぶ力、文章を組み立てる力、そして他者の話す内容を理解する力などが含まれます。
言語機能の変化は、主に脳の側頭葉や前頭葉の機能低下と関連しています。
これらの部位は、言葉の記憶や、思考を言葉に変換するプロセスを司っています。
疲労が蓄積し、脳が十分な休息を取れない状態、特に夜勤業務によって睡眠リズムが乱れていると、この脳の機能が十分に発揮されにくくなります。
その結果、「言葉が喉まで出かかっているのに出てこない」という「舌尖現象」が頻繁に起こるようになったり、以前は難なくこなせていた複雑な会話のキャッチボールに、ついていけなくなったりする可能性があります。
②コミュニケーションへの影響
この変化は、他人とのコミュニケーションを困難にするだけでなく、自己肯定感の低下にも繋がります。
スムーズに話せないことへの焦りや、相手に理解してもらえないというもどかしさは、大きなストレスとなり得ます。
また、冗談や皮肉といった複雑なニュアンスを理解するのが難しくなることもあり、人間関係に影響を及ぼすこともあります。
このような言語機能の変化に気づいたら、焦らずに、ゆっくりと話すことを心がけてみましょう。
また、読書や音読、日記を書くなど、意識的に言葉を使う機会を増やすことが、言語機能の維持に役立ちます。
友人や家族と積極的に会話することも、脳を活性化させる良いトレーニングとなります。
おわりに
認知機能の変化は、誰にでも起こり得る自然な現象ですが、日々の生活習慣や環境によってその進行を緩やかにすることも可能です。
特に夜勤という特殊な勤務形態に従事されている方は、脳への負荷が大きくなりやすいため、自分自身の状態に敏感であることが大切です。
今回ご紹介したセルフチェックのポイントを参考に、少しでも「以前と違うかも」と感じたら、無理をせず、生活リズムの見直しや専門家への相談を検討してみてください。
認知機能の低下は、早期に気づき、対策を講じることで、より健やかな毎日を取り戻すことができます。
あなたの脳と心が、今日も健やかに働き続けられるように——そんな願いを込めて。






