なぜ「夜勤は早死にする」と言われるのか?主な3つの原因

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なぜ「夜勤は早死にする」と言われるのか?主な3つの原因


「夜勤は寿命を縮める」「夜勤明けの体のだるさは異常だ」

夜、皆が寝静まっている時間に働き、朝帰りをする生活を続けていると、ふとそんな不安に襲われることはありませんか?

実は、その不安は単なる噂話ではなく、医学的・生物学的な根拠に基づいた警告でもあります。

しかし、ただ怖がる必要はありません。「なぜ体に悪いのか」そのメカニズムを正しく理解することで、私たちは対策を講じることができるからです。

本記事では、夜勤が体にダメージを与える3つの決定的な原因について、専門的な知見を交えながら、あなたと同じ目線で詳しく解説していきます。

目次

1. 自律神経の乱れとサーカディアンリズム(体内時計)の崩壊

私たちの体には、地球の自転に合わせて約24時間周期でリズムを刻む「体内時計(サーカディアンリズム)」が備わっています。

夜勤という働き方は、この強力な自然の理(ことわり)に逆らう行為であり、体に想像以上の負荷をかけています。

ここでは、昼夜逆転がもたらす「時差ボケ」状態と自律神経への影響について深掘りします。

①脳が混乱する「慢性的な時差ボケ」状態

夜勤をしているあなたの体は、日本にいながらにして、毎日海外旅行の時差ボケを繰り返しているような状態にあります。

人間の体内時計の中枢は、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という場所にあります。

この中枢は、朝の光を浴びることでリセットされ、活動モードに入ります。

しかし、夜勤従事者は「夜に強い光を浴びて活動し、朝に光を浴びてから眠る」という、本来のリズムとは真逆の生活を強いられます。

これにより、脳は「今は活動すべき昼なのか、休息すべき夜なのか」が分からず、深刻な混乱状態に陥ります。

このサーカディアンリズムの乱れこそが、体全体の機能を低下させる根本原因です。

リズムが狂うと、体温調節、消化機能、ホルモン分泌のタイミングが全てずれ込み、体は常に「不快な緊張状態」を強いられることになるのです。

これが「夜勤早死に」のリスクを高める最初の入り口です。

②交感神経の暴走と心血管系へのダメージ

自律神経のバランスが崩れることで、心臓や血管にかかる負担が劇的に増加します。

通常、夜間は「副交感神経」が優位になり、心拍数や血圧が下がって体はリラックスモードに入ります。

しかし、夜勤中は眠気と戦いながら仕事をするため、体を興奮させる「交感神経」を無理やり優位に立たせ続けなければなりません。

これは、本来休むべき心臓に対して「もっと働け」と鞭を打っているようなものです。

研究によると、夜勤従事者は日勤のみの人に比べて、高血圧や不整脈のリスクが高いことが示されています。

交感神経が常に張り詰めた状態が続くと、血管は収縮したままになり、動脈硬化が進行しやすくなります。

その結果、心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる疾患の引き金となってしまうのです。

「夜勤明けに動悸がする」というのは、心臓からの悲鳴かもしれません。

③ストレスホルモン「コルチゾール」の異常分泌

体内時計の崩壊は、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌リズムをも狂わせます。

コルチゾールは通常、朝の起床時に最大になり、血糖値を上げて活動エネルギーを生み出し、夜にかけて低下していくのが正常なリズムです。

しかし、夜勤生活ではこのリズムが平坦化したり、夜間に異常に高くなったりします。

コルチゾールが過剰に分泌され続けると、血糖値が下がりにくくなり、糖尿病のリスクが高まるだけでなく、免疫機能の抑制や、脳の海馬(記憶を司る部分)の萎縮さえ招くと言われています。

つまり、自律神経とホルモンリズムの乱れは、単に「眠い」という問題にとどまらず、体を内側からじわじわと蝕んでいくのです。

これが、長期間の夜勤が寿命に影響すると懸念される医学的な理由の一つです。



2. 睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌不足

夜勤が体に悪いと言われる最大の理由の一つに、最強の抗酸化ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」の枯渇が挙げられます。

メラトニンは単に眠気を誘うだけの物質ではありません。細胞の修復やガンの抑制に深く関わる、私たちの命を守る「盾」のような存在です。

①夜間の光が遮断する「天然の特効薬」

メラトニンは「暗闇のホルモン」とも呼ばれ、周囲が暗くなると松果体から分泌されます。

しかし、夜勤中の明るい照明はこの分泌を劇的に抑制してしまいます。

現代の夜勤環境、特にコンビニエンスストアや病院、工場などのLED照明やブルーライトは、脳に「今は昼だ」と強力に誤認させます。

たとえ昼間に遮光カーテンをして眠ったとしても、本来分泌されるべき夜の時間帯にメラトニンが出ず、昼間に寝ている間も夜間ほど十分な量は分泌されません。

メラトニンが不足すると、良質な睡眠が得られないだけでなく、睡眠中に本来行われるはずの「脳の老廃物の除去」や「細胞のメンテナンス」が不十分になります。

つまり、体はダメージを抱えたまま次の勤務に向かうことになり、この蓄積が「夜勤は早死にする」説を裏付ける要因となってしまうのです。

②強力な「抗酸化作用」の喪失と老化

メラトニンには、ビタミンCやビタミンEを上回る強力な「抗酸化作用」があることをご存知でしょうか。

私たちの体は、酸素を取り入れてエネルギーを作る過程で「活性酸素」というサビのような物質を生み出します。

この活性酸素が増えすぎると、細胞やDNAを傷つけ、老化や病気の原因となります。

メラトニンは、この活性酸素を無害化し、細胞の酸化(=老化)を防ぐ役割を担っています。

夜勤によってメラトニンが減少するということは、この強力な抗酸化システムを自ら手放していることと同義です。

その結果、肌の老化が進みやすくなるだけでなく、血管や内臓の細胞レベルでの老化が加速します。

「夜勤を始めてから一気に老け込んだ気がする」と感じるのは気のせいではなく、抗酸化力の低下による生物学的な変化なのです。

③発がんリスクの上昇と免疫力の低下

さらに深刻なのが、メラトニンの不足と「発がんリスク」の関係です。

国際がん研究機関(IARC)は、交替勤務を含む概日リズムを乱す仕事を「グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)」に分類しています。

これは、メラトニンが持つ抗腫瘍作用(がん細胞の増殖を抑える働き)や免疫賦活作用が、夜勤によって損なわれるためと考えられています。

特に、乳がんや前立腺がんなど、ホルモン依存性のがんリスクとの関連が多く報告されています。

メラトニンは、がん細胞のDNA合成を阻害したり、免疫細胞であるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させてがん細胞を攻撃させたりする働きがあります。

夜勤を続けることでこの防御壁が薄くなれば、当然ながら健康リスクは跳ね上がります。

この事実は、夜勤従事者が定期的な検診を受けるべき最も大きな理由と言えるでしょう。



3. 生活習慣の悪化による「ソーシャル・ジェットラグ」

「夜勤だから仕方ない」と諦めてしまいがちな食生活や運動不足。

しかし、これらは体内時計の乱れとセットになることで、「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」と呼ばれる状態を引き起こし、肥満や生活習慣病を驚くべき速さで加速させます。

①ソーシャル・ジェットラグが招く代謝異常

ソーシャル・ジェットラグとは、社会的な生活時間(勤務時間)と、自分の体内時計との間に生じるズレのことを指します。

このズレが大きければ大きいほど、肥満やメタボリックシンドロームのリスクが高まることが分かっています。

夜勤明けの休日に、「寝だめ」をして昼過ぎまで寝てしまうことはありませんか?

これにより、平日と休日の睡眠中央時刻が大きくずれ、体は常に時差ボケの修正にエネルギーを使い果たすことになります。

この状態が続くと、インスリンの感受性が低下し、血糖値がコントロールできなくなります。

「同じカロリーを摂取しても、夜勤の人は太りやすい」と言われるのは、この代謝機能の異常が原因です。

ただ寝る時間がずれているだけではなく、体が食べたものをエネルギーとして処理する能力そのものが落ちてしまっているのです。

これが、糖尿病などの慢性疾患を引き起こし、結果として寿命に影響を与える要因となります。

②時間栄養学から見る「深夜の食事」の危険性

「何を食べるか」以上に「いつ食べるか」が重要であることを説く「時間栄養学」の視点からも、夜勤中の食事は大きなリスクをはらんでいます。

人間の体には「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質があり、これは脂肪の合成を促進する働きを持っています。

BMAL1は夜10時から深夜2時にかけて最も活性化します。

つまり、夜勤の休憩中に食べるお弁当やカップラーメンは、昼間に食べる数倍の脂肪として体に蓄積されやすいのです。

さらに、夜間は消化酵素の分泌も低下しているため、胃腸への負担も激増します。

未消化の物が腸に残ることで腸内環境が悪化し、全身の炎症レベルが上がります。

この慢性的な炎症こそが、動脈硬化や自己免疫疾患の温床となり、「夜勤早死に」のリスクを底上げしてしまうのです。

不規則な食事は、単なるカロリーの問題ではなく、臓器への暴力と言っても過言ではありません。

③疲労による運動不足と身体の酸化

夜勤生活において最も不足しがちなのが「運動」ですが、これは単なる怠慢ではなく、構造的な問題です。

夜勤明けの体は、泥のように重く、運動しようという気力(ドーパミンなどの意欲に関わる神経伝達物質の働き)が生理的に低下しています。

運動不足になると、筋肉量が減少し、基礎代謝が落ちるだけでなく、体内の抗酸化酵素の働きも弱まります。

運動は、適度な刺激となって体の抗酸化能力を高めるスイッチの役割を果たします。

しかし、運動不足の状態が続くと、体は酸化ストレス(サビつき)に対して無防備になります。

加えて、先述したメラトニン不足と合わさることで、酸化のスピードは倍増します。

「動かないから太る」だけではなく、「動かないから細胞が錆びつき、死に近づく」という悪循環。

これを断ち切ることが、夜勤者の健康を守る最後の砦となります。



おわりに

夜勤がもたらす体内時計の乱れ、メラトニン不足、生活習慣の悪化は確かに無視できないリスクです。

しかし恐れるだけではなく、光の調整や食事の時間管理、昼間の良質な睡眠確保、定期検診や無理のない運動など、実行できる対策が必ずあります。

まずは小さな習慣を一つ変えてみてください。積み重ねが健康を守る力になります



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