食事が、あなたの心と体の土台を作ります。
実は情緒不安定は、栄養不足によって引き起こされている可能性があります。
つまり、食事を意識的に選ぶことで、この乱れを内側から整え、穏やかな心を取り戻す手助けができるのです。
本記事では、あなたの心と体を内側から支え、夜勤明けの辛さを和らげるための「食べる処方箋」を具体的な話を交えて詳しくご紹介します。
今日から実践できる具体的な食材選びと食事法で、あの不快な感情の波を乗りこなしましょう。
1. 心の安定をサポートする「トリプトファン」:幸せホルモンの材料を摂取


「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、心の安定や感情のコントロールに不可欠な神経伝達物質です。
このセロトニンの材料となるのが、必須アミノ酸の一種であるトリプトファン。トリプトファンは体内で生成できないため、食事から摂取する必要があります。
夜勤などで生活リズムが乱れると、セロトニンの分泌量が減少し、イライラや落ち込みが生じやすくなるのです。
また、トリプトファンは脳に運ばれてセロトニンに変換されるだけでなく、夜になると「睡眠ホルモン」であるメラトニンの材料にもなります。
夜勤によって「日中に眠り、夜に活動する」という生活を送ると、このセロトニンからメラトニンへの変換リズムが乱れ、不眠や気分の落ち込みといった悪循環に陥りやすくなります。
そこで、トリプトファンを豊富に含む食品を意識的に食事に取り入れることで、このサイクルを正常化する手助けができます。
①トリプトファン豊富な食品の選び方
トリプトファンを効率よく摂取するには、単体で食べるよりも「炭水化物」「ビタミンB6」と一緒に摂るのがポイントです。
この3つの栄養素をバランスよく含む代表格がバナナ。トリプトファンだけでなく、その代謝を助けるビタミンB6も豊富に含んでいます。夜勤明けで食欲がない時でも、一本食べるだけで心と体に必要な栄養を届けられます
その他にも以下の食品がおすすめです。
- 大豆製品(豆腐・納豆・豆乳など): 日本の食卓に欠かせない大豆製品は、良質なたんぱく質と共にトリプトファンを豊富に含みます。特に豆乳は、就寝前に温めて飲むと、リラックス効果も期待でき、穏やかな眠りへと誘ってくれるでしょう。
- 乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトなど): 乳製品に含まれるトリプトファンは、カルシウムの精神安定作用と相まって、心を落ち着かせる効果が期待できます。夜勤中の休憩時間にヨーグルトを摂るのも良い選択です。
- ナッツ類(アーモンドなど): 小腹が空いた時のおやつとして、アーモンドなどのナッツ類もおすすめです。トリプトファンに加え、マグネシウムも豊富で、神経の興奮を鎮めるのに役立ちます。
②摂取のタイミングと組み合わせのコツ
トリプトファンは摂取してからセロトニンに変換されるまでに時間がかかります。
夜勤前の食事でしっかり摂っておくことが理想的です。
特に効果的なのは「雑穀おにぎり+味噌汁+納豆」といった伝統的な和食の組み合わせで、炭水化物とタンパク質、ビタミンB群をバランスよく摂取できます。
夜勤明けの落ち込みが気になる時は、温かい豆乳にバナナを入れてスムージーにするのもおすすめ。
体が温まることで副交感神経が刺激され、リラックス効果が高まります。
「食べることで心が軽くなる」という実感を得るためには、継続的な摂取が大切です。毎日の食事に少しずつ取り入れることから始めてみましょう。
2. イライラを落ち着かせる「GABA」:神経の興奮を鎮める食品選び


GABA(γ-アミノ酪酸)は、脳内で抑制系の神経伝達物質として働き、過剰な興奮を鎮める役割を果たします。
ストレスが多い夜勤環境では、このGABAが不足しがちになり、イライラが増幅されることがあります。
①GABAを豊富に含む食品と効果的な摂取法
GABAは発酵食品や特定の野菜に多く含まれています。
特に注目すべきは以下の食品です。
- トマト: リコピンで有名なトマトですが、実はGABAも豊富に含んでいます。加熱しても成分は壊れにくいため、夜勤明けの食事にトマトスープやパスタソースとして取り入れるのが手軽でおすすめです。
- 発芽玄米: 白米に比べてGABAの含有量が格段に多いのが発芽玄米です。玄米をわずかに発芽させることで、眠っていた酵素が活性化し、GABAが生成されます。白米を発芽玄米に置き換えるだけで、日々の食事から無理なくGABAを摂取できます。
- 発酵食品(キムチ、味噌など): 発酵の過程で微生物がGABAを生成するため、キムチや味噌などの伝統的な発酵食品も良い供給源です。腸内環境を整える効果も期待でき、心と体の両面から健康をサポートします。
GABAは熱に弱い性質があるため、できるだけ生に近い状態で摂取するのが理想的です。
また、GABAはビタミンB6と一緒に摂取すると体内での利用効率が上がるため、鮭やササミなどビタミンB6豊富な食材と組み合わせるのがおすすめです。
②ストレス状況別のGABA活用法
夜勤中のストレスは時間帯によっても変化します。
午前2時~4時は生体リズム上最も眠気が強くなる時間帯で、この時間に無理に覚醒しているとイライラが増しやすくなります。
この時間帯に合わせてGABA豊富な軽食を取ることで、神経の興奮を抑えることができます。
具体的には、
- 深夜0時頃:発芽玄米のおにぎり+トマトスープ
- 午前3時頃:キムチとチーズのサンドイッチ+トマトジュース
といった組み合わせが効果的です。
GABAは即効性があるわけではないので、夜勤が始まる前から日常的に摂取しておくことが大切。継続的に摂取することで、ストレスに対する耐性が徐々に高まっていきます。
3. ストレス耐性を高める「ビタミンB群」:エネルギー代謝と神経機能の要


「疲れが取れない」「集中力が続かない」—こんな症状があるなら、ビタミンB群不足を疑ってみる必要があります。
ビタミンB群は8種類のビタミンの総称で、エネルギー代謝や神経機能の維持に不可欠な栄養素です。
特に夜勤など不規則な生活が続くと、ビタミンB群の消費量が増え、不足しがちになります。
①各ビタミンBの役割と摂取すべき食品
ビタミンB群は相互に作用し合うため、バランスよく摂取することが重要です。
幸いなことに、ビタミンB群は様々な食品に含まれており、バランスの良い食事を心がけることで摂取できます。特定のサプリメントに頼る前に、まずは食事からの摂取を意識しましょう。
- 豚肉、うなぎ(ビタミンB1): 「疲労回復のビタミン」とも呼ばれるB1を豊富に含みます。夜勤明けのスタミナ補給に、豚肉の生姜焼きなどは最適です。
- レバー、魚類(カツオ、マグロなど)、卵(ビタミンB2, B6, B12): ビタミンB群の宝庫とも言える食材です。特に魚の血合いにはB6やB12が豊富に含まれています。レバーは貧血予防にも繋がり、一石二鳥です。
- 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)、豆類(葉酸): 葉酸は、新しい赤血球を作るのを助けるだけでなく、神経管の発達にも関わる重要なビタミンです。野菜スープやおひたしなどで手軽に摂取しましょう。
これらの食材を組み合わせた、例えば「豚肉と野菜の炒め物」や「焼き魚定食(発芽玄米、味噌汁、ほうれん草のおひたし付き)」といった食事は、ビタミンB群を効率的に摂取できる理想的なメニューです。
ビタミンB群は水溶性で体に蓄積しにくいため、一度に大量に摂るのではなく、毎日の食事でこまめに補給することが大切です。
②調理法と摂取のコツ
ビタミンB群は水溶性で熱に弱いため、調理法に注意が必要です。
以下のポイントを押さえましょう。
- 蒸し料理やスープ:ビタミンの流出が少ない。豚しゃぶや蒸し鶏がおすすめ
- 汁ごと食べられる料理:味噌汁やスープでビタミンを余すことなく摂取
- まとめ調理を避ける:作り置きするとビタミンが減少するため、できるだけ食べる直前に調理
夜勤中の食事で手軽にビタミンB群を摂取するなら、コンビニでも買える「豚しゃぶサラダ」「鮭おにぎり」「バナナ」の組み合わせがおすすめです。
また、アルコールはビタミンB群の吸収を阻害するため、夜勤明けの飲酒は控えめにしましょう。
4. 意外と見落としがち!水分補給の重要性:脱水が招く情緒不安定


「のどが渇いていないから大丈夫」—そう思っている人ほど要注意です。
実は、軽度の脱水状態(体重の1~2%の水分喪失)でも、集中力の低下や情緒不安定が生じることが研究で明らかになっています。
夜勤中はつい水分補給を怠りがちですが、空調の効いた室内では知らないうちに脱水が進んでいる可能性があります。
①脱水が自律神経に与える影響
なぜ水分不足が心にまで影響を及ぼすのでしょうか。その理由は複数あります。
まず、脱水状態になると血液が濃縮され、血流が悪化します。これにより、脳への酸素や栄養素の供給が滞り、集中力の低下や頭痛、強い疲労感を引き起こします。
さらに、脱水はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加させることが示されています。
コルチゾールが増加すると、不安感やイライラが増大し、情緒が不安定になりやすくなります。
つまり、水分が足りないだけで、体はストレス状態に陥り、ネガティブな感情の引き金が引かれてしまうのです。
夜勤中は忙しさのあまり水分補給を忘れがちになったり、利尿作用のあるコーヒーやエナジードリンクで喉の渇きを紛らわせてしまったりすることが、この悪循環を加速させてしまいます。
②効果的な水分補給の方法
夜勤中の水分補給には、以下のポイントを押さえましょう。
- タイミングを決めて飲む: 例えば、「勤務開始前に1杯」「休憩時間に1杯」「勤務終了後に1杯」というように、飲むタイミングをルーティン化しましょう。これにより、飲み忘れを防ぐことができます。
- 常温の水を基本にする: 冷たすぎる水は胃腸に負担をかけることがあります。特に夜勤明けでこれから休息に入る体には、常温の水や白湯が優しく、吸収もスムーズです。
- カフェインレスの選択肢を持つ: 就寝前には、リラックス効果のあるカモミールティーやルイボスティーなどのハーブティーがおすすめです。水分補給と同時に、心を落ち着かせる効果も期待できます。
- 1日の目標量を持つ: 一般的に1.5〜2リットルが目安とされますが、汗をかく量などに応じて調整しましょう。専用のボトルを用意し、「今日はこれを飲み切る」と決めるのも良い方法です。
食事から栄養を摂ることももちろん重要ですが、その栄養素を体中に運び、老廃物を排出するという生命活動の根幹を支えているのは「水」です。
コップ一杯の水を飲むという簡単な行為が、あなたの夜勤明けの乱れがちな自律神経を整え、心を穏やかに保つための、最もシンプルで力強い第一歩となることを、どうか忘れないでください。
おわりに
自律神経は、日々の食事によって整えることができます。食べるものを少し意識するだけで、ストレスに強い心と健やかな体を手に入れることが可能です。
今日ご紹介した栄養素と食材は、あなたの味方になってくれるものばかり。
小さな一歩から始めて、まずは「続けられること」を意識してみてください。
例えば、夜勤明けに温かい豆乳を飲む、寝る前にバナナを食べる、といった簡単なことからでも十分です。
食事を変えれば、心が変わります。そして、心が変われば、日々の過ごし方も変わります。
穏やかで安定した毎日を作るために、今日から「食べる処方箋」を活用してみませんか?
あなたの心と体が、きっと応えてくれるはずです。




