夜勤が終わり、ようやく布団に入れる……そう思った時に限って、お腹がゴロゴロと鳴り始め、トイレに駆け込むことになっていませんか?
疲労困憊の体で、冷や汗をかきながら「またか…」とため息をつくその気持ち、よく分かります。
実は、この「夜勤明けに下痢になる」という悩みは、あなただけのものではありません。
多くの夜勤勤務者が抱える、共通の「体の異変」なのです。でも、
なぜ夜勤と下痢がこんなにも密接に関わっているのでしょうか。
今回は、その根本的な原因と、私たちができる対策を、専門的な視点から、しかし誰にでも分かりやすく解説していきます。
1. 自律神経の乱れと夜勤による下痢の関係


夜勤明けの下痢の最も大きな原因は、私たちの意志とは無関係に体の機能を調整している「自律神経の乱れ」にあります。
自律神経には、活動しているときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経の二つがあります。
この二つの神経が、まるでシーソーのようにバランスを取りながら、心臓の鼓動や呼吸、そして消化器の働きをコントロールしているのです。
①昼夜逆転が招く自律神経の不協和音
通常の生活リズムでは、昼間は交感神経が優位になり、腸の動きは比較的穏やかです。
そして、夜になり体を休めると副交感神経が優位になり、腸の働きが活発になって、睡眠中に便を形成し、朝に排便が起こります。
しかし、夜勤という非日常的なサイクルは、この絶妙なバランスを大きく崩してしまいます。
夜間に働くことで、本来リラックスするはずの時間に交感神経が刺激され、消化器は緊張状態に置かれます。
そして、夜勤が終わり、ようやく家に帰って一息ついた時、ようやく副交感神経が優位になろうとします。
しかし、昼夜逆転した生活で交感神経が過剰に働いた反動で、急激に副交感神経が優位になり、まるでブレーキが利かなくなった車のようにお腹が暴走してしまうのです。
この急激な変化によって、大腸のぜん動運動が活発になりすぎ、便から水分を十分に吸収できないまま排出されてしまう。
これが、夜勤明けに下痢が起こるメカニズムです。
②ストレスが加速させる悪循環
この自律神経の乱れは、ストレスによってさらに悪化します。
夜勤による肉体的・精神的なストレスは、自律神経のバランスを崩し、より一層下痢のリスクを高めてしまいます。
夜勤で腹痛や下痢に悩む人は、ストレスが原因の「過敏性腸症候群」の症状が出ている可能性も考えられます。
夜勤中の下痢には、単なる食事や体調不良ではない、自律神経の乱れという根本的な問題が隠されているのです。
2. 「時間栄養学」から見る夜勤と消化機能


夜勤中の食事のとり方も、夜勤による下痢の大きな原因となります。
私たちの体には、「体内時計」というものが備わっており、約24時間周期で体のさまざまな機能をコントロールしています。
この体内時計に合わせて食事を摂ることを研究する学問を「時間栄養学」と言います。
①深夜の食事が胃腸に与える負担
時間栄養学の観点から見ると、夜勤中の食事は、本来消化器官が休息している時間帯に行われるため、消化機能に大きな負担をかけます。
日中であればスムーズに消化される食べ物でも、深夜に摂ると消化に時間がかかり、胃腸に重くのしかかってしまいます。
特に、脂質の多い揚げ物やこってりとした食事は、消化に時間がかかりやすく、夜勤中の胃腸の負担を増大させます。
さらに、夜間に食べることは、体内時計を夜型にシフトさせ、自律神経の乱れをさらに加速させる一つの原因となります。
②消化に優しい食事の選択
夜勤中に空腹を感じたとき、手軽に食べられるカップラーメンやコンビニ弁当などに頼りがちですが、これは消化器にとって大きなストレスです。
夜勤中の食事は、消化に良いものを意識的に選ぶことが大切です。
- 消化に良い食べ物:温かいスープ、お粥、うどん、ヨーグルトなど、胃腸に優しいものがおすすめです。
- 避けるべき食べ物:脂っこい揚げ物、刺激の強い香辛料、カフェイン、アルコールなどは、消化器に負担をかけ、下痢を誘発する可能性があるので控えましょう。
このように、夜勤中の食事のタイミングと内容を工夫することで、消化機能への負担を軽減し、夜勤による下痢のリスクを減らすことができます。
3. 睡眠不足が夜勤による下痢を引き起こすメカニズム


夜勤が下痢を招くもう一つの重要な原因は、「睡眠不足」です。
睡眠は、単に体を休めるだけではなく、日中に受けたダメージを修復し、自律神経のバランスを整えるための重要な時間です。
①質の悪い睡眠がもたらす影響
しかし、夜勤明けは、体が疲れているにもかかわらず、明るい日中に眠らなければなりません。
体内時計が「今は活動する時間だ」と認識しているため、深い眠りにつきにくく、睡眠の質が低下しがちです。
これにより、十分な睡眠時間を確保することが難しくなり、慢性的な睡眠不足に陥ってしまいます。
睡眠不足は、自律神経の乱れをさらに悪化させます。
前述したように、自律神経のバランスは睡眠中に修復されるため、睡眠が不足すると自律神経の乱れが改善されず、悪循環に陥ってしまいます。
この結果、消化器の働きが正常に行われず、下痢の症状が慢性化する恐れがあります。
②睡眠環境の改善で下痢を予防
また、睡眠不足はストレス耐性を低下させ、ちょっとしたことでイライラしたり、不安を感じやすくなったりします。
この精神的なストレスも、自律神経を乱し、夜勤による下痢を助長する大きな原因となります。
夜勤明けに質の良い睡眠をとるためには、いくつかの工夫が必要です。
- 光を遮る:部屋を真っ暗にして、体内時計が昼だと認識しないようにしましょう。厚手のカーテンやアイマスクを活用するのがおすすめです。
- 騒音対策:耳栓やホワイトノイズマシンを使って、外部の音を遮断し、睡眠環境を整えましょう。
- 寝る前の行動:寝る直前のスマートフォンの操作やテレビ鑑賞は控え、ぬるめのお風呂に入るなど、リラックスできる時間を作りましょう。
これらの対策を講じることで、睡眠の質を高め、自律神経の乱れを軽減し、夜勤による下痢のサイクルから抜け出す一歩を踏み出せるかもしれません。
おわりに
夜勤による下痢は、単なる体調不良ではなく、自律神経の乱れや睡眠不足、食事のタイミングと内容など、複数の要因が絡み合って起こる“体からのSOS”です。
しかし、原因を知り、対策を講じることで、少しずつでもその不調を和らげることは可能です。
まずは、自分の体の声に耳を傾けてみましょう。
「夜勤だから仕方ない」と諦めるのではなく、「夜勤でも快適に過ごす方法はある」と前向きに捉えることが、心と体の安定につながります。
夜勤という特別な働き方だからこそ、特別なケアが必要です。
あなたの夜勤ライフが、少しでも快適で健やかなものになるよう、この記事がその一歩となれば幸いです。





